AIが学ぶものが変わった
生成AIは、文書を読み、質問に答え、下書きを作るところから始まりました。次に学び始めているのは、人がPC上でどの順番に操作し、どこで判断し、途中で何を確認しているかという「仕事の進め方」です。
AIに教えるのは答えだけではない。答えへ至る手順と判断条件である。
毎週繰り返している仕事を、新人へ説明できる形に分けられるか。これがAIに仕事を任せる入口になります。
暗黙の手順がボトルネックになる
人は慣れた仕事ほど、判断の理由を言葉にせず進めます。「いつもの資料を見る」「この条件なら上司へ確認する」「この相手には先に電話する」といった暗黙知です。
AIは、その暗黙知を自動では理解できません。目的、入力、手順、判断基準、例外、完了条件を渡す必要があります。
まず仕事を5〜7工程に分ける
複雑な仕事も、最初は大まかな工程へ分けます。
- 情報を集める
- 条件を確認する
- 比較できる形へ整理する
- 判断材料を作る
- 報告・連絡する
工程が細かすぎると管理が難しく、粗すぎるとAIが迷います。5〜7工程を目安に全体像を作り、必要な部分だけ詳しくします。
AIに教える三つの層
- 手順:何を、どの順番で行うか
- 基準:何を見て、良い・悪いを判断するか
- 例外:どこで止め、誰へ確認し、どの工程へ戻るか
新人へ渡す引継ぎ書を作るつもりで、「目的 → 手順 → 判断基準 → 例外 → 完了条件」の順に書くと整理しやすくなります。
出店開発の仕事に置き換えると
たとえば「候補物件を調べ、周辺環境を比較し、上司へ分かりやすく報告する」仕事は、次のように分けられます。
- 物件情報と条件を収集する
- 地図、商圏、競合、現地情報を確認する
- 比較表へ整理する
- 要点、推奨案、次の行動をまとめる
AIは収集、整理、比較表、下書きを得意とします。一方で、現地の空気感、関係者との対話、投資判断、最終責任は人が持つべき領域です。
AIと人間の役割を分ける
AIに全部を任せるのではなく、得意な部分をつなぎます。
- AI:情報収集、整理、分類、比較表、下書き
- 人間:目的の設定、最終判断、相手との対話、結果への責任
- 境界:承認、送信、発注などは人が確認してから実行
AIが作業し、人が意味と責任を持つ。これが安全に始めやすい基本形です。
個人利用から会社の業務へ
当日のニュースでは、IBMとOpenAIが企業の中核業務へのAI導入を支援する提携を発表した事例を取り上げました。ポイントは、ChatGPTを使う人を増やすだけでなく、業務フロー、社内データ、判断基準、権限、承認ルールまで会社側で整えることです。
AIを導入する会社から、AIが安全に働ける会社へ。競争力の差は、モデルの性能だけでなく、自社の仕事をどれだけ教えられる形にしているかで生まれます。
朝活会で行ったワーク
自分の仕事を一つ選び、5〜7工程へ分けました。
- その仕事の目的は何か
- 最初に必要な入力は何か
- どの順番で進めるか
- AIに任せられる工程はどこか
- 人の経験や判断が必要な場所はどこか
- 何ができれば完了か
まとめ
AIに仕事を任せる第一歩は、新しいツールを増やすことではありません。繰り返し業務を見つけ、手順・基準・例外を言葉にすることです。
自分の仕事を新人へ引き継ぐつもりで書き出すと、AIに任せる場所と、人が持ち続けるべき判断が見えてきます。