なぜAIの提案は「教科書通り」になるのか
この回では、駅周辺にどんな店舗や小型商業施設が向くかをAIへ質問し、商圏分析のたたき台を作りました。最初の回答は整っていましたが、参加者からは「別の街にも当てはまりそう」という反応が出ました。
原因はAIの能力だけではありません。駅名と大まかな依頼だけでは、AIが地域固有の判断材料を持てないからです。
一般的な質問には、一般的な答えが返る。地域固有の提案には、地域固有の事実が必要になる。
最初に渡す五つの情報
商圏や競合を調べる時は、少なくとも次の情報を渡します。
- 目的:出店、改装、テナント誘致、競合比較のどれか
- 対象:業種、客層、価格帯、必要面積
- 地域:駅だけでなく徒歩圏、道路、住宅地、商店街などの範囲
- 競合:比較したい店舗や施設
- 制約:予算、営業時間、契約条件、開業時期
分からない情報は無理に埋めず、「仮説」と「確認済み事実」を分けて出すよう指示します。
3〜5回の壁打ちで深くする
一回目は全体像、二回目以降は弱い部分を掘ります。
1. 前提を確認する:どの情報が不足しているか
2. 比較する:似た街や競合との違いは何か
3. 反対意見を出す:この提案が失敗する理由は何か
4. 現地確認へ落とす:何を見れば仮説を判断できるか
5. 資料にする:事実、仮説、推奨、次の行動を分ける
AIへ「もっと詳しく」とだけ返すより、判断に足りない項目を一つずつ追加する方が改善します。
数字と地図は必ず人が確認する
当日は、AIが作った地図のピンがずれた経験や、税務に関する数字が誤っていた事例も共有されました。見た目が整った資料ほど、正しそうに感じるので注意が必要です。
特に次は元の資料へ戻って確認します。
- 人口、乗降客数、売上、税率などの数値
- 店舗の所在地、距離、所要時間
- 営業中か閉店済みか
- 法律、契約、制度の条件
- AIが示した出典と、実際に書かれている内容
確認できない値は削除するか、「未確認」と明記します。
AIと人の役割分担
AIは、情報収集の入口、論点整理、比較表、質問案、資料の構成づくりに向いています。人は、現地の空気、関係者の意図、投資判断、最終的な数字、結果への責任を持ちます。
AIに完成品を求めるより、「次に人が判断しやすい状態」を作らせる方が実務では役立ちます。
そのまま使える確認指示
AIへ次のように追加で頼みます。
「回答を、確認済み事実、仮説、未確認事項に分けてください。数値と所在地には出典を付け、出典で確認できない内容は未確認と表示してください。最後に、現地調査で確認すべき項目を優先順に出してください。」
まとめ
AIリサーチの品質は、一回目の答えではなく、そこから何を問い直すかで決まります。具体的な地域情報を渡し、反対意見を求め、数字と地図を人が確認する。この型を守れば、AIの一般論を実務のたたき台へ変えられます。